コラム-2008.04.02 ルイス・バラガン

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2008年4月2日~7日
メキシコシティとグアダラハラでルイス・バラガンの建築を見学。作品としては下記の2点以外にヒラルディ邸、オルテガ邸、グアダラハラに点在するルナ邸などの初期住宅群、革命公園などのランドスケープを視察しました。
【バラガン自邸 1948 メキシコシティ・タクバヤ地区】
バラガンが40年間過ごしたこの住宅を、ルイス・カーンは「たんなる家ではなく、家そのもの」という表現を用いて賞賛しています。2004年世界遺産に登録されました。無愛想な入口を入り、小さく暗い玄関を抜けて明るく開放的なリビングに入った時、この空間はパティオを囲んだコロニアル様式の建築と同じ質であると感じました。これまで見てきたバラガン邸の写真では、片持ちの階段やピンクの壁に目が止まりましたが、実際にこの住宅に入るとそういった艶やかな要素にはフォーカスが当たりません。代わりに、明るい太陽の下、壁をつくり屋根をつくり、つまりは暗さをつくることが建築であると、そんなことを考えました。
【カプチーナス礼拝堂 1960 メキシコシティ・トゥラルパン地区】
敬虔なカトリック信者でもあったバラガンは、この修道院の改装の依頼を受けた際、自分が費用を全額負担する代わりに、好きなようにやらせてくれるよう条件を出したとのこと。礼拝堂に一歩足を踏み入れれば、誰もがその光の演出に息を呑むと思います。後方上にある黄色く塗られたガラスを通して光が差しこみ、黄金色の祭壇に当たって反射、礼拝堂全体を光に包む仕掛けです。また、この礼拝堂と自邸の空間の質は対照的であるとも感じました。高揚と静謐、ハレとケ、光と影。個人的には自邸の空間に憧れますが、世界遺産にするならこちらの方が先だったのではないかとも思いました。
バラガンを代表するこの2作品は、全てが自由に設計できる状況にありました。嫌味を言えば施主の言うことを聞かずにデザインしたともとれますが、これらはむしろ純粋に在るべき空間を追求した結果、誰もがうらやむ名作となったと言えるでしょう。そんな中でもバラガン建築の真髄はやはり自邸に凝縮されています。建築を設計する上での全ての要素、光の絞り方、素材や色の選択、庭への眺望、家具やその置かれ方も含めあまりに自然で、長い時間ひとりで過ごすための究極の空間であるように感じました。バラガン自邸の階段室にある椅子の位置と向きが50年間変わらないという有名な逸話がありますが、それは必然たるデザインがここで実践された証であると思います。

バラガン邸1バラガン自邸 リビングより中庭を望むバラガン邸2バラガン邸3バラガン邸4バラガン邸5バラガン邸6トゥラルパンの教会1トゥラルパンの教会2トゥラルパンの教会3ルナ邸ロブス邸革命公園オルテガ邸ヒラルディ邸1ヒラルディ邸2
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